MediaMath株式会社
日本法人代表
富松敬一朗

プログラマティック広告は日本で飛躍的な成長をしています。電通によると2017年のプログラマティック広告費は9400億円(前年比127.3%)で、インターネット広告の中でも特に高い成長を続けています。国内では主に、プログラマティック広告をブランディング目的で活用されているケースが多く、自動車や通信業界での使用が顕著です。

広告テクノロジーや消費者が利用するチャネルが急速に進化し続けている今日、広告主のプログラマティック広告に対するアプローチも変化し始めています。グローバルに活躍する大手広告主はアドフラウド(不正広告)やブランドセーフティなどの懸念を受けて、透明性やプログラマティック広告の管理強化、及びプログラマティック知識とスキルの蓄積を大体的に進めています。今年行われた米Interactive Advertising Bureau(IAB)の調査では、アメリカの大手広告主119社のうち、18%がすでにプログラマティック広告を自社で運用しており、47%は部分的な自社運用を始めていることが明らかになりました。

日本のプログラマティック広告市場はアジア太平洋地域で第2の規模を誇りますが、自社運用を進めている広告主は極めて少ないと言えるでしょう。また、プログラマティック広告の運用は社外か社内か、といった単純なものではありません。代理店主導の日本市場では特に、様々なプログラマティック広告の運用モデルのメリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。

自社運用に伴う課題

  1. コスト

プログラマティック広告の自社運用には多額の費用が必要になります。あるアナリストは、年間2,000万ドル(日本円で約22億円)以上を広告に費やしていない場合は、プログラマティックの自社運用を進めても十分な効果が得られないと分析しています。一方、そのような多額の広告費は持っていないものの、プログラマティック広告の人材確保に集中的に資金を投じ、自社運用を順調に始めている会社もあります。

  1. 人材

プログラマティック広告の自社運用において人材問題は避けては通れません。プログラマティックは誕生してから未だ10年足らずの新しいテクノロジーであり、国内でその知識を持っている人材は少ないのが現状です。

Digiday Japanが2018年に行った調査では、現在約1000億円である日本のプログラマティック広告の年間売上高は、2020年に2600億円まで成長すると予測されています。しかし、マーケティングおよびデジタル広告業界では、人材のスキルギャップが大きな壁となっています。プログラマティック広告の運用は熟練したマーケティング担当者にとっても容易ではなく、間違って自社データやユーザーに対するコントロールを手放してしまうリスクも付きまといます。MediaMathでは、この深刻化している人材需要に積極的に取り組むため、今年から精力的に国内のマーケティング担当者向け(広告主や代理店)にNew Marketing Institute(NMI)のプログラマティックトレーニングの開催を開始しました。これからも継続して日本の人材育成を強化していく予定です。

 

上記の通り、プログラマティック広告の自社運用には課題点や良い面と悪い面があります。現在自社運用の検討をしている方々のため、ここでは以下4つの運用モデルをご紹介いたします。詳細は弊社のホワイトペーパー、「 Tech & Talent: Four Models for Managing the Evolution of Your Programmatic Media」をご参照ください。

Contract King

メディアバイイングの透明性を高め、オーディエンス管理を高めたい広告主にとって最適なモデルです。テクノロジースタックとデータアクセス管理を自社で行い、キャンペーンは代理店のキャンペーン管理スキルに応じて、代理店またはテクノロジーベンダーのいずれかによって管理されるモデルです。

Happy Commune

これは広告主、代理店、テクノロジーベンダーの全員または一部が共同でプログラマティック広告の運用をするモデルです。ここでは広告主に代わって代理店がオペレーションを行い、テクノロジーベンダーがキャンペーンを管理します。


Special Ops

これは広告主が戦略と運用を自ら管理したいと考えているものの、それに必要な人材が揃っていない場合に最適なモデルです。代理店はオペレーション管理に徹し、チャネルプランニング、予算編成、プロセス管理などのアシスタントを行う一方、テクノロジーベンダーはマネージドサービスで、広告主に直接パフォーマンスの詳細などを提供するミーティングを行います。


The Lone Ranger

これは広告主が自身でメディアテクノロジースタックを使い完全にプログラマティック管理をするモデルです。しかし、クリエイティブの戦略やダイレクトバイイングなど、代理店が必要不可欠となる場合もあるでしょう。同時に広告主はテクノロジーベンダーと直接的に協力し、キャンペーン管理、戦略、実施、インサイト分析などを行います。

 

長期的な視点

プログラマティック広告の運用モデルは広告主の長期的な目標、そして持ち合わせている予算や人材によって大きく影響されます。上記の複数のモデルが示すように、プログラマティック広告を自社で運用するか否かは大変複雑な問題です。広告主はニーズを特定し、慎重に検討することをお勧めします。